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自動運転レベル4とは?できることや解禁予定時期、実用化に向けた取り組みについて解説

更新

2025/12/15

公開

2023/04/12

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自動運転は運転の在り方を変えたり、事故や渋滞を減少させるきっかけになることが期待されていたりと、多方面から注目される最新技術です。

自動運転では、運転時の操作や判断などを搭載システムに任せることができますが、どの程度まで操作や判断を任せられるかを0〜5までの6段階にレベル分けしています。現時点ではレベル3までの車が商用化されており、レベル4以降については導入に向けてさまざまな実証実験などが進められている最中です。

本記事では、自動運転レベル4でできることや実用化に向けた取り組み、課題などについて解説します。

目次

    1. 自動運転レベル4とは?

    自動運転では、車のハンドル操作やアクセル・ブレーキの操作をシステムに任せることができます。それらをどの程度までシステムに任せる・預けることができるかを示したレベルのことを、「自動運転レベル」といいます。米国自動車技術者協会(SAE)や国土交通省がレベルを6段階に区分しており、それらは最も主流な自動運転レベルの定義として扱われています。

    各レベルの概要や運転主体などを、以下に表でまとめました。

    対応主体 レベル 技術レベル
    ドライバー レベル0 自動運転化なし
    運転者が運転操作を全て行う
    レベル1 運転支援
    システムが前後または左右の車両制御を行う
    レベル2 特定条件下における自動運転機能
    システムが前後・左右の両方の車両制御を行う
    システム レベル3 条件付自動運転
    限定された条件下において、システムが全ての運転操作を実施する(ただし自動運転システム作動中であっても、システムからの要請があればドライバーはいつでも運転に戻れる状態である必要がある)
    レベル4 特定条件下における完全自動運転
    限定された条件下において、システムが全ての運転操作を実施する・ドライバーが運転席を離れることができる
    レベル5 完全自動運転
    システムが全ての運転操作を実施する
    出典
    国土交通省「自動運転のレベル分けについて」

    自動運転レベル4では、特定の走行環境(「天候が晴れで、日中のみ」「時速40km以下」など)を満たした場合に、アクセルやブレーキの制御、ハンドル操作、信号や標識の認識など、システムが自動で全ての運転操作を行います。運転に必要な「認知・予測・判断・操作」といった能力が必要なくなるため「ブレインオフ」と呼ばれることもあります。

    なお「完全自動運転」とは、自動運転レベル5を指します。レベル5は、場所や天候、時間帯といった制約がなく、どのような状況でもシステムが運転を行う状態です。

    2025年11月時点で政府が目指しているのは自動運転レベル4の社会実装であり、レベル5の実現については技術的なハードルが高く、具体的な目処は立っていません。

    2. 自動運転レベル4でできること

    現時点では、自動運転レベル4は、事業者が管理するバスやタクシー、トラックなどの「特定自動運行」として提供される形を前提に実用化が進んでいます。自家用車での公道走行はまだ想定されていませんが、将来的に一般利用が可能になれば、走行中のスマートフォンやテレビの視聴はもちろん、パソコン操作やゲーム、読書、食事などを全乗員が車内で行うことが、おおむね認められる可能性があります。

    自由にハンズオフやアイズオフができるという特性を生かし、車内空間をカスタマイズする新たなサービスの登場が期待できます。

    大型ディスプレイや音響機器を搭載し、映画鑑賞やゲームを楽しめる車内空間や、高い防音・防振性で仕事に集中できる車内空間など、さまざまなアレンジが考えられるでしょう。

    一方、車内で飲酒や睡眠が認められるか否かは、現時点では明確になっていません。レベル4は運転操作を人が行う必要がない運行形態であるため、乗員や乗客の飲酒や睡眠に関する運行ルールをどのように定めるべきかは、所有者や事業者の安全管理義務も含め、今後の検討課題といえます。

    3. 自動運転レベル4が普及するメリット

    自動運転レベル4の技術が社会に普及すると、社会全体に以下のようなメリットがもたらされると期待されています。

    • 運転手不足の解消
    • 交通事故の削減
    • 渋滞解消
    • 環境負荷の軽減

    具体的にどのようなメリットがあるのか確認していきましょう。

    運転手不足の解消

    少子高齢化を背景に、物流業界のトラック運転手や、公共交通を担うバス・タクシーの運転手不足は深刻な社会問題となっています。厚生労働省の調査によると、全職種の有効求人倍率は1.10倍であるのに対し、自動車運転従事者の有効求人倍率は2.58倍と高水準です。

    出典
    厚生労働省「一般職業紹介状況(令和7年9月分)」

    自動運転レベル4の車両が導入されれば、長距離輸送の一部自動化や、地方部での無人バスやタクシーの運行が可能になります。それにより、ドライバー不足による運送料の値上げや、バス路線の廃止による買い物難民の増加といった課題の解決が期待されています。

    交通事故の削減

    警察庁の統計によると、交通事故の発生原因の約7割は、脇見運転や運転操作の誤りといったヒューマンエラー(安全運転義務違反)によるものです。

    出典
    警察庁「交通事故の発生状況」

    自動運転システムでは、カメラ、レーダー、LiDAR(ライダー)といった複数のセンサーで車両の周囲360度の状況を常に監視します。歩行者や他の車両、障害物を検知し、人間のドライバーよりも迅速かつ正確に危険を予測・回避できるとされているため、自動運転レベル4が普及すると、交通事故の発生件数を大きく減らす効果があると見込まれています。

    渋滞解消

    高速道路の渋滞は、事故や工事だけでなく、上り坂やカーブ(サグ部)での無意識な速度低下がきっかけで発生することも少なくありません。

    自動運転システムは、最適な車間距離や速度を保つように走行するため、不必要な加減速が無くなり、渋滞の解消に貢献すると考えられています。

    環境負荷の軽減

    日本政府は「2050年カーボンニュートラル」の実現を目標に掲げています。運輸部門におけるCO2排出量の削減は、目標達成に向けた重要な課題の一つです。

    自動運転システムは、急発進・急加速を避け、エネルギー効率の良い速度で走行する「エコドライブ」を自動で実施できます。その結果、燃費の向上やCO2の削減が見込まれ、環境負荷の軽減につながると期待されています。

    4. 自動運転レベル4は2023年4月1日から実用化がスタート

    2023年4月1日、改正された道路交通法が施行され、「特定自動運行」の制度がスタートし、自動運転レベル4に相当する車両の公道走行が解禁されています。

    ただし、レベル4自動運転の車両が公道を走行するためには、道路使用許可や特定自動運行許可の申請が必要です。

    政府は、地域限定型の無人自動運転移動サービスを2025年度目処に50ヶ所程度、2027年度までに100ヶ所以上で実現し、全国に展開・実装することや、レベル4の自動運転ができるバスやタクシー、トラックを2030年度に1万台へ増やすことなどを目標として掲げています。

    一方で、2025年11月時点では、許可の対象は事業者が提供する移動・物流サービスが中心であり、個人使用の自動車の公道走行は想定されていません。一般の消費者がレベル4の車を所有するようになるまでには、もう少し時間がかかる見通しです。

    5. 国内外の自動運転レベル4の実用化・実証実験の最新事例

    レベル4の社会実装に向けて、日本国内だけでなく世界各国で技術開発と実証実験が活発に進められています。

    日本国内の最新事例

    2024年に自動運転の実証実験は全国100ヶ所以上で行われましたが、レベル4に対応しているのは7ヶ所のみです。主に、特定の公道や限定エリアでの無人移動サービスとして実用化が進められています。

    出典
    デジタル庁「モビリティ・ロードマップ2025」

    代表的な先行事例として、福井県永平寺町のケースが挙げられます。永平寺町では2023年5月に、国内初となるレベル4を使った公道の移動サービスが始まりました。町内の約2kmの区間を、7人乗りの無人自動運転カートが運行しています。

    また、2024年6月には、羽田みらい開発株式会社が民間企業として初となるレベル4のシャトルバス運行許可を取得しました。羽田イノベーションシティ内(約800m)で自動運転シャトルバス「NAVYA ARMA(ナビヤ アルマ)」が運行しています。

    出典
    国土交通省「自動運転移動サービス社会実装・事業化の手引き」

    一方、物流分野では、2025年3月から新東名高速道路(駿河湾沼津 SA~浜松 SA)で自動運転トラックの実証実験が実施されています。

    出典
    国土交通省「新東名高速道路における自動運転トラックの実証実験を開始」

    なお、2025年11月時点で、日本国内において一般向けに市販されている自動運転レベル4搭載の車種はありません。

    レベル3搭載車としては、2021年にホンダが「レジェンド」を発売しています(現在は販売終了)。

    しかし、トヨタ自動車は「レベル4」の自動運転システムを搭載した車両を2027年度に市場導入すると発表。日産自動車も2027年度に国内で自動運転サービスを始めることを発表するなど、各社で開発の動きが進んでいます。

    海外の最新事例

    アメリカ

    アメリカは、世界有数の自動運転大国です。Waymo(ウェイモ)は、アリゾナ州フェニックスやカリフォルニア州サンフランシスコなどで、運転席が無人の完全無人ロボタクシーサービスを商用展開しています。

    一方で、ゼネラルモーターズ子会社のCruise(クルーズ)は2023年に人身事故を起こしたことで、安全体制の見直しのため運行を一時停止しており、安全確保の難しさも示しています。

    ドイツ

    法整備の面で世界をリードしているのがドイツです。2022年に世界で初めて公道でのレベル4走行を法的に許可する法律を施行しました。自動車メーカーでは、メルセデス・ベンツがレベル3搭載車を市販化したほか、ボッシュ社と共同で空港での自動駐車システム(レベル4相当)の実用化も進んでいます。

    中国

    政府主導で「交通強国」のスローガンの下、自動運転技術の開発を推進しています。検索エンジン大手のBaidu(バイドゥ)は、自動運転プロジェクト「Apollo(アポロ)」を進め、北京、上海などの大都市でロボタクシーの実証実験や商用サービスを展開しています。

    6. 自動運転レベル4の課題とは?

    自動運転レベル4の全国的な普及には、主に以下のような課題があるといわれています。

    • 導入コストの高さ
    • 複雑な交通状況への対応
    • 緊急時の対応方法(法整備)
    • 社会的な理解・信頼を得られるか

    レベル4の普及を実現するためには、技術、法律、社会インフラなど多岐にわたる課題を一つずつ解決していく必要があります。

    導入コストの高さ

    自動運転レベル4の車両を製造するには、従来の車にはない高価な部品が多数必要です。 高性能なセンサーやカメラ、AIチップなどが、車両本体の価格を押し上げる要因となっています。

    また、車両本体の費用だけではなく、遠隔監視システムの構築費用や、高精度マップの維持・更新費用といったランニングコストも発生するため、自動運転車両 1 台を導入するのに 1.6~2.2 億円程度かかると言われています。

    さらに、これまで自治体や企業が頼りにしてきた国の補助金も減少傾向にあり、採択件数や補助率の縮小が進んでいます。今後、自治体が運行事業として収益を確保する仕組みづくりが求められるでしょう。

    複雑な交通状況への対応

    自動運転車が公道で安全かつ円滑に走行するためには「有能で注意深い人間の運転者」を基準とした安全性を有するようなシステムの設計が必要です。

    しかし、実際にはシステムにとって判断が難しい局面も少なくありません。例えば、横断歩道において、歩行者や自転車が「横断しようとしている」状態なのかを正確に識別したり、横断中の歩行者が急に反転して戻るといった行動を予測したりするのは困難です。また、渋滞車列の間をすり抜ける二輪車が存在する場合や、交通ルール違反(路上駐車、飛び出し、速度超過車など)が発生している状況などでは、急ブレーキや長時間の低速走行・停止などのリスクがあり、円滑な交通を阻害する恐れがあるとされています。

    それぞれの個別具体的なケースを定義していくことや、他の交通参加者への自動運転車の挙動の理解促進、交通ルールの取り締まりや罰則の強化など、いくつかの解決策が検討されており、今後は、自動運転車と人間が安全に共存できる交通ルールの整備が進んでいくことが期待されます。

    緊急時の対応方法(法整備)

    自動運転レベル4は「運転者がいない状態」(特定自動運行)となるため、万が一の事故やトラブルが起きた時に誰がどう対応するのか、法的な枠組みが必要です。

    この点については、法整備が段階的に進められています。2023年4月からは改正道路交通法が施行され、レベル4の運行を許可制とする「特定自動運行の許可制度」が始まりました。

    許可を得て運行する事業者は、運転席のドライバーに代わる体制として、「特定自動運行主任者」(遠隔監視などを行う)や「現場措置業務実施者」(現場に駆けつける)といった人員を配置する義務を負います。

    また、自動走行装置の作動中に死亡・重傷事故が発生した場合の原因究明も今後の課題の一つです。運輸安全委員会による事故調査機関の設置を念頭に、必要な調査体制の構築や法制度の整備が検討されています。

    社会的な理解・信頼を得られるか

    自動運転サービスを持続的に運営し、全国に普及させるためには、技術的な安全性の確保に加え、地域住民や他の交通参加者からの信頼と理解を得ることも重要です。自動運転車が「ルールは守るが融通が利かない存在」と見なされてしまうと、社会に受け入れられにくくなってしまいます。

    例えば、ロボタクシーの導入が先行するアメリカでは、「自動運転車が慎重すぎて、かえって交通の流れを妨げている」といった苦情が報告されています。 人間の運転者なら通過する黄信号で急停止したり、歩行者を警戒しすぎてなかなか発進しなかったり、といったケースが実際に起きているためです。導入当初は、自動運転車への批判や妨害行為が発生するケースも散見されました。

    一方で、運行実績を積み重ねるにつれて市民がその存在に慣れ、批判や妨害行為が減ったという報告もあります。そのため、日本でも、実証実験を行う自治体などが中心となり、試乗会や説明会、SNSでの情報発信を通じて自動運転の特性や安全性を伝え、理解を深める活動が各地で進められています。

    7. 自動運転の車は自動車保険の契約は必要?

    自動運転レベル4の車両であっても、自動車保険の必要性は従来の自動車と変わりません。万が一の事故に備え、保険への加入を検討しましょう。

    自動運転車は、限定された条件下においてシステム作動のもとで運転を行っている場合、事故を起こす可能性は低いとされていますが、ゼロではありません。 レベル4までの自動運転車は、事故が発生すると自動運転中であっても、従来どおりドライバーや車両所有者などに損害賠償責任が課される可能性があると確認されています。対人賠償保険や対物賠償保険を契約していれば、高額な賠償責任に備えることが可能です。

    また、システムの欠陥やハッキングなどを理由に人身事故や物損事故が発生した場合は、原因究明に時間がかかるケースもあるでしょう。そのような場合は、任意保険の「被害者救済費用特約」を活用すれば、迅速に被害者の救済を図ることができます。被害者救済費用特約とは、車両所有者に法律上の損害賠償責任がないと判断された場合でも、被害者の治療費や見舞金などの救済費用を保険金として支払う特約です。

    ただし、この「被害者救済費用特約」は、あくまで「被害者(他人)」を救済するためのもので、運転者自身(所有者)のケガは補償対象外です。

    例えば、システムの不具合が原因で単独事故を起こし、運転者自身がケガをしたようなケースに備えるためには、「人身傷害保険」の契約も検討する必要があります。人身傷害保険は、事故の過失割合にかかわらず、運転者ご自身や同乗者の治療費、休業損害などを契約した保険金額の範囲内で補償するものです。

    9. 監修コメント

     自動運転は、運転操作をどの程度システムに任せられるのかを基準にレベル分けされています。レベル4では、決められた条件下における加減速やハンドル操作などがすべて自動化されます。日本でも2023年4月からレベル4の公道走行が認められ、各地で実証実験が進んでいます。
    将来、自家用車への導入が進めば、移動中に読書や映画鑑賞、仕事などに時間を使えるようになり、車内での過ごし方が大きく広がるでしょう。
    一方で、導入コストの高さや複雑な交通状況への対応、社会全体の理解といった課題も残されています。また、自動運転中であっても事故が発生すれば、所有者が賠償責任を負う可能性があります。レベル3・4のいずれにおいても、自動車保険への加入はこれまで同様に重要です。

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    井口 豪
    監修
    井口 豪(いのくち たけし)

    特定行政書士、法務ライター®︎。タウン誌編集部や自動車雑誌編集部勤務を経て、2004年にフリーライターに転身。自動車関連、ファッション、スポーツ、ライフスタイル、医療、環境アセスメント、各界インタビューなど、幅広い分野で取材・執筆活動を展開する。20年以上にわたりフリーライターとして活動した経験と人脈を生かし、「行政書士いのくち法務事務所」を運営。許認可申請、入管申請取次、遺言書作成サポートなど法務のほか、記事監修や執筆業も多数手掛ける。自動車業務に熟達した行政書士だけが登録を認められる、ナンバープレートの出張封印が可能な「丁種会員」でもある。

    HP https://inokuchi.pro/

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